第5話 ネーミング・センス(解説)
小説「シンダンシ!」第5話の解説です。小説はこちら。
針宮さん:タピオカ屋さんの多比岡(たびおか)さん。
僕:はい、さっそく小説のネタありがとうございます。
針宮さん:ダマされていましたよ、わたし。まさか、タピオカ屋さんが多比岡だなんてねえ。あっ、からかってます?
僕:本気です。多比岡です。今後とも、よろしくお願いします。
針宮さん:(腕組みしながら)うむうむ。
針宮さん:それで、お店の名前どうします?
僕:オシャレな感じで、フランス語なんてどうでしょう。
針宮さん:タピオカって単語はブラジルの言葉がもとで、ポルトガル語に輸入されたそうですよ。
僕:よく知ってましたね。って、ウィキペディア見てたんですね。
針宮さん:タピオカ屋さん、おっとぉ、多比岡さんのマネです。
僕:もうタピオカ屋さんでいいです。
針宮さん:そうですね、その方がしっくりきます。
僕:(ぐぬぬ)
僕:小説の中ではお役所へ行って申請書もらっていますけど、実際もそんな感じなんですか。
針宮さん:たとえばですけど、東京都中小企業振興公社というところで実施している商店街起業・承継支援事業というのがあります。こちらはウェブサイトから申請書をダウンロードできます。
僕:これが小説のモデルになっているんですね。
針宮さん:きっとそうです。
僕:ということは、針宮さんの頼もしい姿は小説で見せ場を作るためのやらせってことですね。
針宮さん:やらせです。
小説の第6話「ふつつかものですが……」読んでくださいね。
第4話 クリームソーダの思い出(解説)
小説「シンダンシ!」第4話の解説です。小説はこちら。
僕:第4話は「クリームソーダの思い出」でした。針宮さんは妄想の中でおいしいものでも食べていたんですか。
針宮さん:そんなことありません。
僕:でも口のまわりぬぐってましたよね。
針宮さん:してません。
僕:今回は商店街の空き店舗を紹介されました。
針宮さん:居抜き物件というやつですね。
僕:なんですか、それ。
針宮さん:もとのお店のままってことです。賃貸物件では、原状回復といって設備や内装を撤去して借りる前の状態で返さないといけないなんて場合があります。
でも、居抜き物件というのは原状回復なしの分、もとのお店が使っていた設備を使えるから安く開業できます。出て行くときも元に戻さなくていいから楽ですね。
僕:そういうのを居抜きって言うんですね。ちょっと武術の言葉っぽいと思ったけど、ぜんぜんちがった。
針宮さん:飲食店の開業にかかるお金は300万円と言われたり600万円と言われたりします。高額です。
僕:ですよねえ。自分がお店を出すことになるなんて思わなかった。
針宮さん:それで補助金とか助成金が重要になってくるんです。お店がうまくいけば経済が活性化されますし、ゆくゆくは税収だって増えます。
でも、お店を出そうという人みんなが、どうやってお店をはじめたらいいかとか、助成金や補助金のことにくわしいなんてことはありません。
そこで中小企業診断士の出番となるわけです。(にっこり)
僕:でた、営業用のにっこりスマイル。
針宮さん:べつに営業用ではありません。
僕:今回の話で、喫茶店に後継ぎがいなくてつぶれちゃうっていうの、寂しいものがありますね。
針宮さん:タピオカ屋さんのおうちは後継ぎがいて安泰ですけれど、今後127万ものお店や中小企業が後継者がいなくて廃業に追い込まれると計算されています。
僕:めちゃくちゃ多いんですね。そういえば、子供の頃好きだったお蕎麦屋さんが、いつのまにか廃業しちゃってました。カレー南蛮好きだったんですけどねえ。残念だなあ。
針宮さん:そうなんです。そのお店の味や企業の技術がどんどん失われていってしまうことになります。大きな損失ですよね。
それで、家族ではなくても継ぎたいという人がいたら後継者になってもらったらいいじゃない、ということで、中小企業診断士の使命として事業継続に取り組んでいたりします。
針宮さん:残念です。(じゅるり)
僕:(やっぱり口をぬぐった)
つぎは小説の第5話「ネーミング・センス」読んでくださいね。
第3話 とある商店街の空き店舗へ(解説)
小説「シンダンシ!」第3話の解説です。小説はこちら。
僕:第3話は、針宮さんが大学生だということがわかったところで終わりました。キメポーズでしたね。
針宮さん:普段そんなことしませんけどね。小説だからです、フィクション。
僕:大学生でも中小企業診断士として仕事ができるんですね。
針宮さん:めずらしくいい質問です。今回は中小企業診断士になるための条件についてお話ししましょう。
僕:勝手に決めちゃったよ。
針宮さん:中小企業診断士になるには試験に合格しないといけません。1次試験はマーク式で7科目あります。2次試験は記述式試験と口頭試験の2段階です。
受験資格にはなんと、年齢、学歴ともに制限がありません。
ということはですよ、最年少合格を狙って小学生が受験してもよいわけです。小学生中小企業診断士が誕生したら、テレビのニュースで取り上げられそう。テレビに中小企業診断士の話題が取り上げられるなんてうれしいことですね。
その子のキャラが立っていてタレントみたいに扱われ、テレビ番組にレギュラー出演なんてことになったらどうしましょう。小学生受験者が続出したりして。町のあちこちにポスター貼られたりして。中小企業診断士の時代がすぐそこですよ。(※)
僕:妄想を広げすぎです。現実はそんなに甘くありませんよ。
針宮さん:すみません、暴走しました。
もうすこし詳しい話をしますね。
針宮さん:1次試験には科目免除という制度があります。弁護士には法律の知識が十分あるでしょうということで経営法務という科目は受けなくていいですよ、などの制度です。
いい点を取れそうだから受験してもよいのですけどね。1次試験合格には受験した科目で平均60%以上の正答率が必要ですから。
それから、前年の1次試験で不合格だった場合、60%以上の正答をした科目を申請により免除してもらえます。科目合格といいます。受験してもいいのは科目免除と同じです。
僕:一発勝負ではないんですね。受験生は希望をもてそう。
針宮さん:1次試験に合格すると2次試験が受けられます。しかも1次試験に1回合格で2回チャンスがあります。2次試験に不合格でも、つぎの年に1次試験免除で2次試験が受けられます。2次試験の勉強に集中できてお得です。
僕:ここでも一発勝負ではない、なかなか親切な試験です。
針宮さん:でっしょう? 受験したくなってきたんじゃないですか。
僕:いえ、まったく。
針宮さん:2次試験は記述式試験と口頭試験にわかれています。記述式に合格しないと口頭試験に進めません。口頭試験を実施するの大変ですからね。
僕:口頭試験なんて、僕だったら緊張しちゃってダメそうです。
針宮さん:試験員は中小企業診断士だからやさしく対応してくれますよ。答えを考えているうちに質問内容がわからなくなったなんてときには質問を繰り返してもらえます。
僕:話を聞いているだけで緊張してきた。ちょっと。
針宮さん:どこ行くんですか。
僕:トイレですよぅ。
針宮さん:もどるの遅いから逃げたかと思いましたよ。
僕:遅くありません。せっかちですね、針宮さん。
針宮さん:1次試験、2次試験と合格すると中小企業診断士になれるかというと、まだです。実務補習というのを受けないといけません。これは、実際の中小企業診断士業務を体験してもらうという制度です。
僕:そこでしくじると。
針宮さん:ガンバって試験に合格しても中小企業診断士になれません。(にっこり)
僕:そんなー。
針宮さん:5名程度でチームになって取り組むから大丈夫です。それに中小企業診断士が指導員としてつきます。安心ですね。
僕:そんな難関を乗り越えて、針宮さんは大学生にして中小企業診断士になったのですね。
針宮さん:そうですよ。(えへん)
針宮さん:1次試験に合格したあと2次試験と実務補習を受けずに中小企業診断士になる方法もあるんですけど、もう文字数がオーバーしていますね。またの機会にお話しします! 小説の第4話、読んでくださいねー。
(※)作者注
中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則というものがありまして、実は未成年の登録は拒否されます。試験に受かったんだから登録したってよいのではと思いますけれど。つまらないの。
第2話 お店を出しましょう!(解説)
小説「シンダンシ!」の第2話はこちら。
僕:僕たちの小説第2話が無事に公開されました。
針宮さん:1話で打ち切りにならなくてよかったですね。
僕:いや安心するのはまだ早い、実は第3話が勝負なんです。アニメも3話で観るのをやめると言う人が多いらしいんです。第4話を読んでくれる人が、そのあともずっと読み続けてくれる可能性が高いということみたいですよ。
針宮さん:またウィキペディアですか。
僕:いえ、グーグルで検索にかかったブログです。
針宮さん:そうですか。
針宮さん:そんなことより、中小企業診断士です。
僕:そうでした「シンダンシ!」。第2話では、針宮さんと言う名前がわかりましたね。それに、また針宮さんに迫られるのでした。
針宮さん:獲物を狙うメスライオンのようにね。
僕:根にもちすぎです。
針宮さん:第1話の解説で中小企業診断士の業務を少し紹介しましたけど、実はほんの一例で、これが中小企業診断士の業務範囲という決まりはありません。中小企業診断士の業務は多岐に渡るというか。
法律で定められている、弁護士、会計士、税理士、社会保険労務士、その他、そういった仕業の範囲の業務を行うことは禁止されていてできませんが、あとはなんでもありです。
そんな中小企業診断士業務の中に創業支援と呼ばれるものがあって、タピオカ屋さんのお店を出すお手伝いは創業支援に当たります。
一度お店を出す手伝いをしてしまえば、飲食店なら同じ流れで業務を進められます。専門にして効率よく稼いでいる中小企業診断士もいますね。多くの実績があればそれだけお客さんも集まりやすいですし。
実際にタピオカ屋さんのお店はどうやって出したらいいかと言うとですね。
まずお役所関係として、食品衛生管理者という資格、飲食店営業許可を取ります。
店舗物件探しと契約。
お店の内装、外装の工事をします。
キッチン設備を入れます。
仕入れ。
プレオープンで練習して、いよいよ開店です。
開店したからと言って油断してはいけません。開業届。これは税務署へ。
銀行口座を作ったり、会計システムを使ってお金の管理をしたりということもします。宣伝も必要かもしれません。
これらがひと通り済めば、あとは営業していけそうですよね。
建物を借りる、内装外装工事をする、そう聞くとお金がいっぱいかかると思うことでしょう。いろんな手続きがあって手間も大変。
誰かにサポートしてもらって、しかもお得にでないと、とてもお店なんて出せません。というわけで、中小企業診断士に依頼するのが賢い方法なんです。国家資格をもっていて安心。
というわけで、お店を出しませんか。(どやあ)
僕:……。
小説「シンダンシ!」第3話はこちらです。
第1話 キミなにもの? シンダンシですっ!(解説)
小説「シンダンシ!」第1話はこちら。
僕:はじまりましたね、小説「シンダンシ!」
針宮さん:えっ、そうなの? 許可したおぼえないんですけど。
僕:そんな、今さら。
針宮さん:うそです。
僕:やめてください、心臓に悪いから。
僕:第1話は、僕がタピオカドリンクを売っているところに針宮さんが颯爽と登場するところですよ。
針宮さん:うそっ、わたしのことメスライオンなんて言ってたくせに。
僕:いや、まあそうですけど。
針宮さん:これはもう自主回収してもらうしかありませんね。
僕:え、ネットで公開しちゃってますよ。自主回収ってどうしたら。
針宮さん:冗談ですよ。いいです、メスライオンで。
僕:根に持ってますね。
針宮さん:持たないと思いました?
僕:さて、中小企業診断士ですけど。
針宮さん:あ、話し進めた。
僕:ぐずぐずしていると、大事な話ができなくなりますよ。
針宮さん:そう、大事です。中小企業診断士の業務ですね。
僕:いや、そのまえに中小企業診断士ってなんですか。
針宮さん:ぷう(ほっぺをふくらませ)。そこからですか。
中小企業診断士とは、国家資格のひとつです。「中小企業支援事業の実施に関する基準を定める省令」という法律にその名前が出てきます。
僕:中小企業診断士法ではないんですね。しかも名前が出てくるって、なんか微妙な言い方です。
針宮さん:ぐぬぬ。痛いところを突いてきますね、タピオカ屋さん。
中小企業診断士法みたいな法律はありません。そこが弁護士や公認会計士、税理士とちがって弱いところかも。
僕:中小企業診断士は最弱だけど、弁護士の仲間だということはわかりました。それではいよいよ、業務の話をお願いします。
針宮さん:これって、中小企業診断士を持ち上げてくれる小説ではなかったの? わたしダマされました?
僕:いやいや、これからでしょ。どん底から這い上がるのは。
針宮さん:どん底からはじめなくてもいいのに。
僕:それで、中小企業診断士の仕事ってどんなのがあるんですか。
針宮さん:中小企業診断士の業務としては、
- 経営指導
- 講演・教育訓練業務
- 診断業務
- 調査・研究業務
- 執筆業務
なんかがあります。
僕:ウィキペディアにある業務そのままの紹介ありがとうございます。
針宮さん:なにかこそこそ見ていると思ったら、ウィキペディアを見ていたんですか。だったら、「ウィキペディアを見ろ」でいいじゃないですか。
僕:僕はいいんですけどね。小説を読んでくれる人がウィキペディアまで見てくれるかわかりませんよ。ここは針宮さんが解説した方が読んでもらえると思うんですよね。
針宮さん:むむむ、それを言われちゃうと弱いんですけど。では、経営指導から、内容を詳しく説明していきますね。
僕:あ、もう文字数じゅうぶんなんで、詳しい話はまたあとでお願いします。
小説のあとは、第2話の解説もチェックしてくださいね。
針宮さん:もう? 小説はいいから、解説読んでくださいねー。中小企業診断士のことがわかっちゃいますよ。
小説「シンダンシ!」の第2話はこちらです。